いつからだろう？

あいつが眩しいと思うようになったのは……。

最近俺は、こんな事ばかり考えているような気がする。

この前、初めて俺から誘ったボーリング。

バスケ部のアイツに、はめられて、アイスさえ奢り損ねた。

アイツに指摘されて、俺が良い方に変わったと気づかされた。

チームプレイが出来るようになり、仲間を信頼出来るようにもなった。

それは、あいつがいたからだ。

あいつが俺に色々気づかせてくれたからだ。

他の誰の言葉も俺の心には届かなかった。

本当に「俺様」だったよな……。

あいつの声だけが届いた。あいつだけだ……。

そんなことにやっと気づいた。



自覚……



今日から期末テストだっつーのに、やっぱり俺は、身が入らない。

紺野と笑いながら楽しげに登校しているの横顔を

あいつ、あんなに綺麗だったか？

なんて思いながら見つめているなんて、やっぱり俺はおかしい。

「よぉ！鈴鹿！」

ポン！と肩をたたかれた。

「姫条……」

「なんや？景気悪そうな顔やな！」

俺の気持ちなんかお構いなしなニコニコ顔がムカつく！

って、コイツに当たることじゃねぇーけどよ。

「まーほれ。いくら今日数学の試験やからって……」

姫条は俺の浮かない顔が試験のせいだと思ったらしく、勝手に話を進めている。

「あ！」

突然、姫条が叫んだ。

「ちゃ〜〜〜ん！！」

「へ？」

ドキンとする俺を置き去りに、前方のに向かって走り出す。

ムカッ！なんで姫条が！！

「ちょ、ちょっと待て！姫条！！！」

俺は慌てて追いかける。

俺達に気づき、が振り向き、足を止めた。

「おはようさん！」

ににっこり笑う姫条に、穏やかな気持ちでいられない。

なんなんだ？このモヤモヤは！

「おはよう。姫条君、鈴鹿君。」

にっこり笑うにドキンとして、挨拶もろくに出来やしねぇ。

「鈴鹿君？どうしたの？」

心配そうな顔して俺を見つめてくる。

「べ、べつに……。」

恥ずかしくてプイと顔をそむけちまう。

「あ〜、ちゃん。そいつの事はほっといてえ〜で？」

「え？」

「今日の数学の試験、自信ないだけやないの？」

ケラケラと姫条が笑う。

ば〜か。そうじゃねぇ〜よ。そう思いながらも黙っていた。

「そうなの？鈴鹿君。昨日一緒に勉強した効果なかった？」

「「え？」」

姫条と紺野が声を揃えた。

「なんや？鈴鹿お前、昨日ちゃんと一緒に勉強したんか？」

あきらかに怒っているような姫条の声。

「あぁ、そうだよ。だから試験はバッチリだぜ。」

がぱぁ〜〜〜〜〜と笑顔に変わった。

「本当！？良かったぁ。」

何か言いたげな姫条も黙ったままの紺野も、と共に歩き出した。

これ以上突っ込まれなくて良かったと安心する俺がいる。

何が安心？何に安心？？



「ずるいわ、ちゃん。今度俺にも勉強教えて？」

「え？なんで？？？」

きょとんとした顔をして、が答える。

なんで？？勉強を教える理由？？

無意識にそう聞くを俺は嬉しく思った。

わざとらしい位に肩を落とした姫条がキッと俺を振り返る。

「なんでって……ちゃん、つれないなぁ。鈴鹿には教えてあげて、オレはあかんの？」

おちゃらけた声でそう言いながらも姫条は静かに俺を睨んでいた。

そう思うのは俺の勘違いなんかじゃねぇと思う。

睨み返した俺にフッと姫条が不敵に笑った。

な！なんだよ？？

「まーええわ。試験終わったら、ちゃんと海！行けるしな！」

え？う、海？と？？

う、嘘だろ？？？

「え〜？姫条君、それは姫条君の補習がなかったらでしょ？」

くすくすとが笑っている。

本当なのか！姫条と２人でか！！



行くな！！！！

そう言いたいのに言えない。

言いたい？なんで？

ついこの間まで、一緒に出かけて遊んで笑って、

それで楽しいんだから、今は何も考えなくても、このままでいいじゃねぇかと…

思ってたよ…な？

でも駄目だ。姫条に笑いかけんな。

姫条と出かけようとなんかすんな！


嫉妬……か？

といると調子狂って、何言ってんだ？俺！とか

何やってんだ？俺！って思う事が多くなった。

これがやっぱ、恋ってヤツなのか？

そういうことなのか？

独占欲……っていうヤツなのか？？

姫条と二人で海だと！！

み、水着じゃねぇ〜か！駄目だ、駄目だ！

「ぜってぇ〜駄目だ！」

「「「え？」」」

海辺の雰囲気にのまれて、いい雰囲気な2人を想像して、声が出てた。

ハッとした時、3人が振り返っていた。

「鈴鹿君も行くよね？海？」

が不思議そうな顔しながら俺に聞く。

「はぁ〜〜〜？」

聞いてねぇ〜ぞ？そんな話。

「あれ？違うの？姫条君？」

俺の心を読み取ったのか、姫条を振り返り尋ねている。

「あ〜。まだ鈴鹿誘ってなかったわ。すまん。忘れとった。」

な、なにぉ〜〜〜！わざとだろう！姫条！！

姫条と睨み合う。

そんな火花に全く気づかないは、紺野と何か話している。


「遠慮してくれてかまわへんからな？」

小声で姫条が俺に言う。

ムカ！

「誰がお前と二人っきりになんかさせるかよ！」

姫条はびっくりしたようだった。

ふ〜〜んと俺をジロジロ見て言った。

「鈴鹿もようやく自覚したみたいやな。」

うんうんと一人で納得している。

じ、自覚……？

「なんのことだよ？」

馬鹿にされてんのか？とムッとして聞く。

「なんや？まだなんか？オレは遠慮なく行くで？」

また不敵に笑いやがる。

「ちゃん、オレのもんにしたる！」

「させるかよ！！」

考えるより先に言葉が出ていた。

姫条も驚いていたが、言った俺自身びっくりだ。

「そうこなくちゃ、おもろないな。」

またも姫条が笑った。




自覚……。

そうか……。俺はあいつを誰にも取られたくない。

独占欲……間違いなくそれなんだ。

恋……そんなもの、この俺が？

そう思っていたけど、誤魔化してたんじゃ、他の誰かに横から攫われちまう。

そんなの許せねぇ。

だったら、認めるしかねぇ〜じゃねぇか。

俺はに惚れてる！俺の物にしてぇ。

そう覚悟を決めれば、あとはシュートを打って、ゴールを決めるだけだ！

遠慮なんかしねぇ。そんなのガラじゃねぇ。

とことん走るだけだ！覚悟しやがれ！！




「あ、鈴鹿君！補習なかったら！だからね！海！」

突然振り向き、笑顔でが俺を見る。


ドッキ〜〜〜〜ン。

「あ、あぁ……。」


駄目だ……。

意識……しちまうじゃねぇ〜か。

だぁ〜〜〜！情けねぇ〜〜〜。


「ぷっ！」

「な、なんだよ？姫条？？」

真っ赤になってる自覚がある。

「あ〜っははははぁ〜。」

「て〜め〜えぇ〜〜〜。」

握った拳がふるふる震える。

「お前、可愛いやっちゃなぁ〜！」

姫条が大笑いする。可愛いだとぉ〜〜〜！

「待て！姫条！！」

逃げる姫条を追いながら、の横を駆け抜けた。

小さく手を振る。


を俺の物にしたい。

でもこうやって姫条と馬鹿しながら、楽しく過ごしたい。

それは無理なことか？？

姫条が本気じゃないといい……そんな事考えちまう。






end


■花野の言い訳■

ずっと書いてなった補習コンビのお話。
突然どうにかしたくなりました。(笑)
私の中で、姫条君は先にちゃんを大事だと自覚します。
でもちゃんと仲良くなれたのは鈴鹿君の存在があったから。
ちゃんはどっちかというと鈴鹿君寄りの友達。
鈴鹿君は恋！なんて自覚しません。
姫条君は鈴鹿君が自覚しないうちに隙間に入ろうとします。
でも、姫条君の中で、それはフェアじゃないという気持ちがあります。
だから早く、鈴鹿君にも自覚して欲しい。
同じ土俵に上がって、勝負がしたい。自分が不利だと思っていても、
姫条君は鈴鹿君も大事なので、わざと煽るような行動を取ってしまう。
そしてついに、鈴鹿君も！！な〜んて。

今更だけど……もっとちゃんとスジ道立ててシリーズ書けば良かったなぁ。
(反省)つじつま合ってないかも。（滝汗）

2005.2.10　花野


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