お前が生まれた特別な日

「あいつ……何処に行ったんだ？」


教室にはまだ鞄があった……。

図書室も、体育館裏も、あいつが行きそうな所は探した…。

「何処かで行き違いになった…のか？」

まいったな……。

もしかして、教会……か？？

そう思って、体育館裏から教会へ向かおうとした時だった。




「えぇ〜？本当？」

「ええ。すごい偶然ですねぇ。そんなこともあるんですね。」

あ…いた。

でも誰と…。


「私、同じ人と初めて会ったぁ。」

「僕もですよ。ふふ。嬉しいです。」

なんだ？やけに楽しそうだ…。

俺は心穏やかにしていられなかった。

「それでは、もし、よろしければ、これから…」

何を言う気……だ？



「おい！」

二人が同時に振り返る。

「あ、珪君！」

「葉月君…。」

探してた本人萌寧と、ちょっと顔を赤くしている守村がいた。

「萌寧…ここにいた…のか」

やっと探している本人に会えたが、俺の視線は冷たく守村を見ていた。

「え？もしかして珪君、私を探してたの？」

「あぁ。」

「ごめんね。……今ね！守村君と…」

その言葉の続きを聞くより早く、

「萌寧、行くぞ。」

俺は萌寧の手を引っ張った。

「え？ちょっと？？珪君…？」

「あ……葉月君？」

驚いている２人を無視し、萌寧を連れ出す。


「あ、ごめんね！守村君。またね！」

俺に引っ張られながら、笑顔でバイバイ〜なんて手を振っている。

「あ、ハイ。それでは、また。萌寧さん。」

丁寧にお辞儀をして、こっちを見ている守村が、

ガックリと肩を落としているように見えたが、そんなこと、知りはしない。


「ねぇ？どうしたの？珪君？」


黙々と歩く俺と一緒に歩きながら、不思議そうにお前が聞く。

それでも俺は黙って歩いた。


そのうちに萌寧は、何だか楽しそうに鼻歌を歌い始めた。

全く………。




「にゃぁ〜」


体育館裏の猫の一家が俺達に寄ってくるのを見ると萌寧は、

パッと俺の手から離れて、「モネ」を抱き上げる。

「モネちゃん！元気そうだね！」

最近暑いけど大丈夫？なんて笑顔で話しかけている。



萌寧がモネを抱いたまま俺を振り返る。

「さっき、どうしたの？」

少し首を傾げて、俺を少し見上げる仕草がたまらなく可愛いと思う。


俺はそっと萌寧に近づき、モネごと抱きしめた。


「け、珪君？？？」

びっくりしてモネを放し、ちょっとジタバタする萌寧。

「大人しくしてろ。」

更にギュッと力を込めて抱きしめる。

「あ、はい…。」

腕の中で萌寧が、急に大人しくなり、顔を真っ赤にしながら、直立不動でじっとしている。



「ぷっ」

「あ、なんで笑うの？？」

ぷ〜っとふくれっつらになった萌寧を俺の腕の中から、解放する。

「いや、すっごい緊張してるなって…そう思ったんだ。」

クスクス笑う俺に、ムッとした視線を送りつつ、真っ赤な顔で

「だって、しょうがないじゃない！びっくりしたんだもん！」


「いったい、いつになったら慣れるんだ？」

かぁ〜〜〜！！更に萌寧が赤くなる。

「知らない！」

プィっと背中を向けてしまった。

からかいすぎた…か？

でも、悪い。そんなお前も可愛くて仕方がないんだ…俺…。


「さっきだって！！」

ん？さっき？

「守村君ね！誕生日が私と同じ今日！なんだって！

誕生日が同じ人に初めて会ったって話をしてた途中だったのに。」

何だって？守村も今日が誕生日？

いや、そんなことはどうでもいい。

「守村君、さっき何か言いかけてなかった？悪いことしちゃったな。」

ムッ

あいつはお前をこれから誘おうとしてたんじゃないのか？

だから俺は……。


今日は萌寧の誕生日だ。

お前が生まれた特別な日。

そんな日だから、俺はお前と少しでも長く一緒にいたい。

いや、特別な日じゃなくても…その思いは同じだ…。

お前は違うの……か？


半ば強引に萌寧を引き寄せ、きつく抱きしめる。



「け・珪く…ん？」


「萌寧……」


パッと顔をあげた萌寧に口付ける。


甘く、深く……。


誰が見ていたって構わない。

お前は俺のものだって、皆に分からせてやればいい。












「もう！体育館裏だったけど、学校なのに！」

俺の隣にちょこんと座り、

さっきのキスを真っ赤な顔して、咎める萌寧。

「ごめん。」

ちっとも悪いと思ってないくせに、一応謝っておく。

「もう、誰かに見られたら……」

「恥ずかしい」

次から次へとブツブツ言っている。

「俺……。………お前をずっと探してた……。」

「え？…珪…君…？」

「なのに、お前いなくて……」

「え？さっきのこと？」

「間に合わないかと……思った。」

「間に合わない？？」

首を傾げる萌寧。

「焦った。……なのに、お前、守村と……」

「え？」

何の話？？訳が分からないよ？という顔で俺を見つめている。

「本当は日付が変わる瞬間。一緒にいたかった。」

「え？」

「でも、それは無理だったから………。」

「？」

「せめて……」

「せめて？」

「午後３時３４分。お前が生まれた時間を一緒に祝いたかったんだ。」

「え？えええ〜〜〜〜？」

とってもびっくりした顔をしていた。

「珪君、私が生まれた時間まで覚えていてくれたの？？」

「ああ……。」

「あ、ありがとう！！嬉しいぃ。」

泣き出しそうな笑顔だった。

俺はそんな萌寧の頭を抱き寄せ、髪にキスをする。



「ハッピィーバースデー、萌寧。」





「…ずっと俺の側にいろよ……」



涙で言葉にならない萌寧は、何度も何度も頷いてくれた。









「あ、ねぇ！珪君！」

突然萌寧が振り返っった。

「ん？なんだ…？」

「…………。」

ん？

「どした？お前、顔が赤い……ぞ？」

「…………。」

なんだ？どうしたんだ？

赤くなって俯き、何か言い出せない萌寧の手から荷物を取り、

耳元で告げる……。

更に真っ赤になった萌寧のその腰に手を回して、歩き出した。

２人で俺の家に行く為に…………。











「プレゼント……俺がいい……のか？」










ＥＮＤ

(C)KanoNakaizumi‘Lemonade’
ＨＡＰＰＹ　ＢＩＲＴＨＤＡＹ！萌寧さん


■　花野の言い訳　■

いつもお世話になっている「sleepwalker」の萌寧さんの誕生日祝いにと書かせて頂きました！
守村君と同じ日！ということで、彼に友情出演をお願いしました！（は？）
萌寧ちゃんと王子は付き合っているということで、萌寧ちゃん、お泊り道具持って登校してたりします。
だって、今年は金曜日だから！土曜日は自主休校。王子宅にお泊りです。うふふ。
赤くなって何か言いたい萌寧ちゃん。何が言いたかったかは想像にお任せします。（はい？）
王子は勝手に解釈しました！(爆笑)　あぁ。でも王子が王子じゃない！ごめんなさい！
しかも萌寧さんからリク聞いたくせに、全然答えてないじゃん！な私。
だって、誕生日だから、誕生日ネタ(ネタ?)でいきたかったんだもの。
後日、またリクは某所でプレゼントするということで……。

ちょっと早いけど、おめでとう！！萌寧さん！

2004.6.28　花野

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