「ねぇ、姫条。今度の日曜日に遊園地に行かない？」

藤井に昇降口で声をかけられた。

藤井とも確かに少し前までは、出かけたこともあった。

でも･･･。

「なんや、藤井ちゃん。デートの誘いか？」

「違うわよ！遊園地のチケットもらって、使わないともったいないから、

貧乏で自分じゃいけないだろうあんたも連れて行ってやろうと思っただけよ。」

相変わらずの減らず口に、何や安心するものの･･･。

もう、あの子以外の子と遊びに行かへんて、自分でそう決めたんや。

「ありがたい誘いやねんけどなぁ。その日は･･･。」

断わりのセリフを口にしようとした瞬間。

「ちゃんも来るんだけどな。」

！うん！？ええ？･･･ちゃん？

思わず、出かかったセリフを飲み込む。

「なんや？ちゃんも来るんか？」

さりげなく聞く。

「そうだよ。４枚チケットもらったからさ。もうあの子は誘ってあんの。

だから姫条も誰か一人誘って連れてきてよ。」

ヨロシク！と藤井の顔が言っている。

「いや、そうやなぁ〜。ホンマは用事があるんやけど、チケット無駄にするのはもったいないしな。

ほな。鈴鹿でも誘ってみるか？」

ちゃんが来るなら話は別や。もうちゃんは誘ってあるんやったら、

俺が断ったら、俺の知らんとこで、ちゃんが誰か他の男２人と行きよる。


そんなのは絶対に嫌や。






「ほな、ちゃん！次、俺とジェットコースター乗らへん？」

「うん！スピード感がたまんないんだよね！」


自分で誘っておいてなんやけど、ちゃんの隣のポストは鈴鹿にも譲りとうない。

藤井が面白くない顔してんのも分かっとる。

せやけどな。こればっかりは譲られへん。

どう考えたって、今の俺と鈴鹿とじゃ、分が悪いんは俺の方や。

こんなチャンス逃しとうないわ。




「ほな、次は･････ちゃん、はよ行こ！」

そう言った俺に、ちゃんがちょっと困惑した顔をした。

しまった。やり過ぎてもうた？

そんな困った顔して鈴鹿を振り返らんでもええやん。



「あ、私！今度は鈴鹿君と行く！」

「は？」

鈴鹿がびっくりしとる。

「え？鈴鹿と？･･･じゃー俺は藤井とかぁ〜。」

ここで、ごねるのはちゃう。そんなみっともないこと出来へんし、引かれてまう。

「何よ？さっきからムカつくわね。私のチケットでしょ！」

本当に藤井が嫌そうな顔をしとるわ。

「おぉ。悪りぃ、悪りぃ。忘れとったわ。」

「ほんま、ムカつくー。」

「だから、その下手な関西弁やめぇ。」

俺は、藤井と先に歩き出す。



ちゃんと鈴鹿を振り返りとうない。



「良かった････。」

！

小さかったけど、そう聞こえた。

愕然とした。俺、しつこかったか？･･･何か失敗したんか？

迷惑やったんやろか？･･･楽しめてもらえんかった？

せっかく次はお化け屋敷やのに･･･。

下心なんてホンマにないねんで？


ちゃんから拒絶の言葉なんか、聞きとうなくて、とっとと歩く。



だけど、やっぱり後ろの２人が気になってしゃーないんや。


あんまり遅いんで、

「はよ、来いよぉ〜。先行くでぇ〜。」

そう声をかける。

「行こ？」

「あ、ああ」

２人が楽しそうについてくる。見とうない。

俺以外の他の誰かと楽しそうにしとるとこなんか･･･。





先に藤井とお化け屋敷から出てきた俺は、

藤井の話に耳を傾けながらも、後の２人が気になっていた。

はよ、出てきぃへんかな･･･。

あ、来た！･･････なんや？ものごっつー楽しそうやんか。

ちょお、待て！！

ちゃんが鈴鹿の顔を覗き込んで笑ってるやん･･･。

何かあったんか？？･･････････気になってしゃーないやんか。




「おぉ〜。スズカー。ちゃん！どないやった？」

「うん！怖かったけど、鈴鹿君が一緒だったから大丈夫！」

ちゃんが笑う。俺が言われたかったセリフや･･･。

「あ、それそれ！それ言うてもらわな！

藤井なんてお化け蹴飛ばして、お化けの方が怖がっとったわ。」

本音を笑いで誤魔化した。

「何をぉ〜？姫条！」

藤井がこぶし振り上げて追いかけてくる。

その場から立ち去りたい気分やったのでちょうどいい。


「あはは〜」

そんな俺らを見て、本当に楽しそうにちゃんが笑った。

なぁ、俺が藤井とおっても、自分、全然平気なんか？

俺は鈴鹿にヤキモチ焼くねんで？

ちっとも俺なんか、眼中にないんか？

それでも、俺は･････････。




「あー、ちゃん。何スズカと楽しそうにしてんねん。俺も入れてやー。」


わざとらしいか？それでも邪魔せずにはいられないんや。


「姫条君！次バンジーね！」

「おお〜。エエやん、それ。ほな次はちゃんと俺やね。」

「あ、ごめん。今、鈴鹿君とやろうって決めちゃった！」

！

「何やそれ〜。ええもん、スネたるもん。」

そんな冗談のようにゆうたけど、ホンマは涙出そうになった。


でも俺そんなキャラちゃうやろ？


どないしたんや？･･････かなり困惑しとるわ。



「はいはい。姫条は私とね！」

藤井の声で、はっと我に帰る。

またも楽しそうに笑っているちゃん。･･･別に藤井と漫才しとるんとちゃうで？

俺はちゃんとだけ一緒にいたいんや。


でも、だからどうしようって？

俺がホンマにちゃんを好きだとしてもや。ちゃんは？

鈴鹿とは今まで、ちゃんから誘ってあちこち遊びに出かけてること位、俺かて知っとる。

鈴鹿はアホやから、何も考えんと暇だから位にしか、思うてへんかもしれん。

自分がちゃんをどう思ってるかなんて、考えたことすらないかもしれん。

そやから、鈴鹿が自覚せんうちに、入り込まなあかんと焦っとった。

でも、ちゃん。･････････ちゃんはやっぱり鈴鹿を好きなんか？

俺はただ、邪魔しとるだけ･･･なんか？





でも、たとえ、そうやったとしても！！

やっと見つけたんや。

そやから、遊びもナンパも止めたんや。

自覚もせんと、今の立場に甘んじてる鈴鹿に負けとうない。

ちゃんには、俺の隣におっても、自然に笑ってもらえるようになりたい。

俺のこと、好きになってもらいたいんや。



楽しそうな２人を見とうない。･･････そうは思っても気になるもんはしゃーないやん。



振り返ると･･････なんや、ホンマに嬉しそうに楽しそうに笑ってるちゃんがいる。


俺･･･どないすればいいんや？


どうすれば、ちゃんの特別になれるんや？






「あ、２人とも早いよぉ。行こ！鈴鹿君！！」

先を行く俺と藤井にちゃんが声をかける。

鈴鹿と２人して走り出してくる。





確かにさっきまで、ものすごく楽しかった。

それやのに･･････････



今はこんなに胸が苦しい･･････。





なぁ、ちゃん。






俺、どないすればいい････？






ＥＮＤ


花野の言い訳

ズザザザーーーー！（平伏！）
「Ｗデート」の姫条君視点です！！
楽しく書こうと思ったのですが･････。
どう考えても、鈴鹿君有利！！な状況で、鈴鹿君視点を書いたので、
姫条君サイドはやっぱり、切なくなってしまいました。
姫条君のキャラを壊してますか？（どきどき）
私の中で、姫条君は本当の恋愛は初めて！だと確信していますので、
初めての本気に戸惑い、どうしていいのか分からない状況でいて欲しいんです。
そんな彼の心の葛藤(?)を少しでも表現出来ていて、受け取ってくだされば幸いです。
そして、生粋の関東育ちの私ですので、関西弁は嘘っぱちです。
関西弁に変換出来るソフト････あったら欲しい！

2004.4.2　

遊園地の素材は下記サイト様よりお借りしました。
サイト名　「おしゃれ探偵」
管理人　「Kira」様

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