譲れない気持ち

「姫条君！」


「お、よぉ、ジブンも今帰りなんか？」

「うん、一緒に帰ろう？」

「おおええで。ほんならお茶でも･･･」

そこまで言いかけて、なんや、周りの人の視線が気になった。

「うん！お茶して帰ろう！ちょうどケーキ食べたかったんだぁ。付き合ってくれる？」

嬉しそうに、楽しそうにちゃんが微笑む。

なぁ、ジブン、俺なんかと一緒におって、ホンマに平気なんか？



「？姫条君？？」

心配そうにちゃんが覗き込む。クラッとすんで、そんな顔されてまうと。

「ああ、すまん。ほな、行こか？」

「うん！」

以前、俺なんかとしょっちゅう一緒におって平気なんか？って聞いた。

悪い噂とかそういうのされてんのちゃうかな？と。

気にしてないって、ジブン言いよるけど。

それって、ほんまなんか？

同じこと何度も聞くのは変やろし、ジブン信じてるんやけど、心配なんや。

洒落にならん噂されてるのも、俺が悪さしてきたことも耳に入っとるはずや。

最近、ぐるぐる同しこと考えとる。ジブン変な噂で傷ついて欲しくないんや。

まっさらなほんまに純真な良い子なんやから。





突然、俺は制服の袖を引っ張られた。

「ん？なんや？」

俯いて、立ち止まっているちゃんがおる。どないしたんや？

「･･･････････････」

「ちゃん？どないしたんや？」

俺は心配になった。周りの視線が怖くなったんやろか？

俺と居たないと思ったんやろか？


「ねぇ、姫条君。･･････」

俺はちゃんの言葉をドキドキしながら待った。


「もしかして、私･･･迷惑だった？」

は？？何の話や？心底びっくりしてもうて、言葉にならんかった。

「さっきから、何かため息ばっかりついてるし、上の空だし･･･」

「え？ため息なんかついてへんよ？」

「ついてた！」

「ついてへんって！」

「･･････････。」

また黙ってしまった。確かに考え事しとったけど、ジブンの事やで？




「最近、姫条君、また遠くなったような気がする。」

「え？」

悲しそうな顔をしているちゃんに、どう言っていいか分からん。


「あのね、和馬君が姫条はいいヤツだって、いっつも言うからね。」

ちょお待て！なんで鈴鹿が出てくるんや？しかもいつの間に名前で呼んどるんや？

なるべく俺は平静を装ってたずねる。

「は？鈴鹿がなんやて？」

「私ね、１年の頃、姫条君の事、明るくて軽い人だなぁって思ってたの。」

ドキンとする。やっぱそうか･･･。

「まぁそう思うやろなぁ？そんで？」

「うん。私とは違うタイプの人で、どこまで本気何だか、冗談何だか分からなくてね。怖かったの。」

絶句･･･。お調子者とは思われてるやろなとは思っとったけど、怖がられてたんかい？

「あ！ごめんね。今は違うよ。全然違うんだよ？」

信じてくれる？と一生懸命言う。あーなんでこんなに可愛いんや？

「今はちゃうんやろ？」

「うん。それでね、和馬君があんまりいいヤツだって言うから、

私は偏見を持っていたんだって、恥ずかしくなったの。」

鈴鹿が俺のフォローしてたんか？それとも鈴鹿の言うことはちゃんにとって絶対なんか？

なんて声をかければいいんや？こんな時に俺は････。

「姫条君？怒ってる？」

黙ってる俺を不安そうに見上げて、たずねてくる。

「怒ってへん、怒ってへんて！いや、まーちょっとショックではあったけどな。

それを今俺に言うてくれるっちゅーことは、今はホンマに平気なんやろ？」

「うん！姫条君が本当はすごく照れ屋で、めちゃくちゃ優しくて、

周りにすごく気を遣ってる人なんだって、分かったから。」

そこでちゃんはいったん言葉を切った。


「･･･でもね、時々辛そうっていうか、淋しそうにも見えるの･･･。」

え？ジブンには俺がそう見えてるんか？

ただ、面白おかしく生きていけたらええって思っとっただけやで？

ちゃんと出会う前の俺は確かに･･･。そりゃ、今は違うねんけど。

照れ屋？誰もそんなこと言わん。気を遣う？普通お調子者って思うだけやろ？

しかも辛そう？淋しそう？そんなとこ見せてへんやろ？？

なんや、マジびっくりして、なんや、嬉しくて･･･。

ちゃんが話を続ける。

「でも、だからね？本当は姫条君、私の事迷惑なのに、優しいから、和馬君と友達だから、

付き合ってくれるのかな？って思っちゃって･･･。

でもそんなんだったら、私、嫌だから。姫条君に無理して欲しくないから･･･。」

は？なんでそうなるんや？

「ちょお待てって！なんでそうなるんや？俺無理なんてしてへんし、ちゃんと一緒にいたいんやで？」

「でも！」

キッと顔を上げたちゃんは少し泣きそうな顔をしていた。

「ため息ばっかりついてたもの。」



「……なぁ、そんなに俺、ため息ついてた？」

ちゃんにそんな悲しい顔させる位だったんやろうな･･･。

「うん。何か辛そうな悲しそうな心配そうな･･･顔・・・してた。」

ホンマによく見ているんやなぁ、この子は！降参や！


「ちゃん、ごめんな。」

ポンと頭をたたいて笑った。上手く笑えてるやろか？

「姫条君？」

不思議そうに俺を見つめるちゃん。ホンマはこのまま抱きしめたい。

「あんな、前にも聞いたと思うんやけど、俺と一緒におってジブン平気なんか？

ジブン俺なんかとチャラチャラ遊ぶタイプちゃうやん。変な噂もされよるやろ？

周りの視線、痛くないか？それが心配やってん。」

隠してもしゃーない。俺はまた同し事を言ってみた。

「気にしてないって、私前にも言ったよね？信じてくれていないの？」

怒ったような、悲しむような、ちゃんの顔。

「いや、そうやないんやけど･･･。」

どうしても消せない不安なんや。俺の側におって欲しい。

でもこの子に俺はふさわしいか？隣におってもいいんやろか？ってな。



「みんなの視線って･･･姫条君がカッコイイから見惚れてるだけでしょ？」

違うの？首を傾げ、あっけらかんとちゃんはそう言うた。

は？？マジでそう思うてんの？？

「ほんま、ジブンには敵わんわ。」

アハハハ！！俺は思い切り笑った。

「なんで笑うのよぉ？？」

背中をポカポカ叩きながら、ちゃんはブツブツ言うてる。

「本当にそう思っただけなのになぁ〜」



ちゃん、ホンマに、ありがとうな。

周りの目なんて気にせんと、ジブンの目で俺を見てくれて。

そりゃま、１年の頃の話は痛いけど、もう今は３年で、隣で笑ってくれてるんや。

そんなジブン信じなきゃ、バチ当たるわな。


「もう、ええって。ほら、ケーキ食いに行くんやろ？はよ、いこ！」

「うん！」

もう何事もなかったように微笑むちゃんがおる。

「あのねぇ、今日ね････。」

楽しそうにちゃんが話す。



まさか、鈴鹿の言葉で、ちゃんの俺に対する認識が変わったとは思わんかった。


なぁ、鈴鹿。

もうずっと俺はお前に敵わないんやろか？そう思いながらも足掻いてきた。

お前は単純馬鹿で、ホンマにいいヤツだから、何も考えちゃいなかったんやろな。

今な、こうやって、色々な俺を見て、噂より何より、俺の心配してくれたり、

俺のこと考えてくれたりする、そんなちゃんを、俺はお前にも誰にも絶対に渡しとうない。

ちゃんがおってくれたら、変われそうな気がするんや。

自分勝手かもしれん。でも俺にはちゃんが必要なんや。


ありがとうな、鈴鹿。


ごめんな、鈴鹿。


お前もちゃんに惚れてるんは、分かっとるし、俺の方がまだまだ分が悪いのも分かってる。


でも俺、お前にも譲りとうない。


これだけは譲れないんや。







「････。」

「え？」

「ジブンのこと、そう呼んでもええか？」

真っ赤になって、びっくりしている。


嫌だって言われたらどないしよう。どきどきする。


でも････。


「うん、いいよ！」


お日様みたいな笑顔で、ちゃんはそう答えてくれた。








ｅｎｄ



花野の言い訳

姫条君も幸せにしよう！！企画！！え？勝手にやれ？
失礼しました！セカンドダーリンのくせに、切ないんで！
どうしたもんかと････。
何か「Ｗデート」からかなりすっ飛んだ関係？になっておりますが、
私の設定では、当然ちゃんは鈴鹿君を好き(愛情）だと認識していませんので、
遊び仲間！気の合う友達！というレベルだったりして、まだまだ姫条君逆転のチャンス！有り！
だったんですよねぇ。絶対叶いそうにないとか言われちゃいましたけれども！
これからも姫条君に頑張ってもらおうと思います。

2004.4.13に書いたけど、すっ飛び過ぎなんで、
アップはどうしたもんかと悩んだけれど、途中は後ほど書くことにして、
とりあえず、最近自力更新出来てないので、アップします！2004.4.29



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