2004年2月13日夕方、ショッピングモール


はぁ〜！寒いっスねぇ。

何か雪でも降りそうっス。

いい男リサーチしようにも、今日はやけに女の子が多いなぁ。

今日は家に帰ろうかなぁ。


そう思いながら、キョロキョロしつつ、通りを歩き出した。

一際女の子がいっぱいいるお店の前にいるのは？


あ！あそこにいるの先輩じゃないっスか？

先輩を見つけるジブンの目に間違いはないっス！

買物？一人…ですよね？

声をかけようと思ったけれど、ふとこの前声をかけた時のことを思い出す。

こんな人込みで大声で呼んだら、
また先輩に恥ずかしいって、怒られちゃいますね…。


近くに行ってから声をかけるべきだよなと思っているうちに、



あ、お店入っちゃったっス。


でも、なんであんなに女の子ばっかりなんスか？



あ……お店の飾りつけを見てやっと

明日がバレンタインデーだということを思い出す。


そっか、バレンタインチョコっスね！


ということは…………


先輩も買いに来たってことっスね。








2月14日バレンタイン当日朝、学校の廊下



「日比谷君！」

先輩に呼び止められて、ドキドキだった俺。


「さん、ど、どうしたんスか？」

「べつに！いい天気だね！」

「せ、先輩。今日がなんの日か……

　い、いえいえ。とってもいい天気ッスね！」

「冗談だってば！

　はい、バレンタインのチョコレート！！」

「…………。」

「なに？」

「先輩、コレってやっぱり……。」

「義理チョコだけど……。」

「そうッスか。あっ、い、いえ……。義理でも、うれしいッス。」







2月14日バレンタイン当日昼、学校の屋上



誰からも見えないように、柱の影に隠れて座り、
手に乗せたチョコを見つめる……。


「はぁ〜〜〜〜」


確かにチョコはもらったっスけど……。

野球ボールの形の小さなチョコ達……。

嬉しくない訳じゃないっスよ？

嬉しいのは嬉しいんです。でも……。


でも、あの日見た先輩は、何かほんのり頬染めて、

一生懸命にチョコを選んでいて……。

すっごい綺麗なラッッピングのチョコが入った袋を

大事そうに抱えて、店から出てきたっスよ。


「あのチョコは誰にあげるんスかぁ〜？」


ため息と共に空を見上げて、ふと視線をズラすと……



あ！姫条先輩っス！

うわぁ！すごい数のチョコっスね！やっぱりすごいっス。


やっぱりここは弟子にしてもらいたいっス。




「姫条君！」


え？先輩？？


「あっ、！

　いや、その、コレは、な……。」

え？あの姫条先輩が焦ってる？？


「わぁ！たくさんチョコレート、もらっちゃって……。」

「ちゃうねん、コレはさっき自分で買うて来てん。

オレはもう、チョコレートが好きで好きで……。

１日３個は食わんと……。」


あの姫条先輩が下手な言い訳してるっス。


「じゃあ、ちょうどよかった。はい、わたしからも、チョコレートあげるよ。」


「えっ……？コレ、ホンマに、オレに？」

「どうしたの？姫条君なら、チョコぐらい珍しくないでしょ？」

「アホ。オレかて、どの女の子からも同じようにヘラヘラもろとるワケちゃうで。」

「自分から、こんな上等なん、もらえるとは思ってなかったわ。

……うれしいで、ホンマに。」







「はぁ〜！」

あのチョコは、姫条先輩にあげる為だったんスね……。

やっぱジブンじゃ役不足ですか……？

そうですよね。ジブンは年下で、姫条先輩はジブンだって、憧れてます！

姫条先輩も先輩の事？



あーあ、落込んでいたって仕方ないっスよね。

俺はまだまだこれからの男っス！

今はまだダメでも、絶対にこれからっス！

先輩！見ててくださいよぉ〜！







2月14日バレンタイン当日放課後、下駄箱付近



今日は早く帰って、好きなアニメでも見て、気分転換するに限ります！



あ、あれ？先輩？？と……。









「あ、珪君」

「……。どうした？」

「はい、これ。バレンタインのチョコ！」

「……わざわざ作ったのか？」

「うん。……ちょっと眠いけどね。」

「……で、目が赤いのか？」

「まあね、そんなとこ。」

「……バカだな。」

「そんな言い方しなくても……。」

「ウソだよ。ちゃんと味わって食べるから。」

「だから、早く帰って寝ろよ。

　……サンキュ。」


「うん。一緒に帰ろう？」





て・・手作りチョコ？？？



わぁ〜。先輩すっごい嬉しそうな笑顔……。

ものすごく可愛いっス……。

それに葉月先輩も優しい顔してるっス。

初めて見ました。



本命はやっぱ葉月先輩ってことですか？

だからあんなに姫条先輩に、あっさりだったんですか？

何かちょっとおかしいと思いました。

それに葉月先輩も先輩のこと……。




俺、出る幕マジないってことっスか？










校門を一緒に並んで出て行こうとしている先輩達に、俺は、


「せんぱ〜い！せんぱ〜い！」


「あ、日比谷君！」


あ、今、葉月先輩ムッとしたっスね。


「今、帰りっスか？」

「うん。日比谷君も？」

「はい！」

「あ、じゃあ、一緒に帰る？」

そんなに、にっこり笑わないで下さいよ、先輩。

葉月先輩の視線が痛いっス……。

「あ、いえ、今日は早く帰って来いって言われてて、

残念ですけど、お先に失礼します！」

「そうなんだ。うん、じゃあ、またね！」

俺はチラッと葉月先輩を見て……俺と目が合った葉月先輩は、

一瞬睨んだように見えたけれどスッと視線をはずした。

「ハイ！また今度、誘ってください！」

そう言って先輩達に背を向け……


「あ、先輩！チョコレートありがとうございました！！」


にっこり笑って振り返り、そう言った。

その瞬間、葉月先輩がピクッと反応し、あからさまにムッとした。


これくらいの意地悪、いいっスよね？







「おい！」

「え？どうしたの？珪君？」

「……お前、アイツにもチョコあげた……のか？」

「え？？うん。」

「………………」

「珪君？」

「…………………………」




うわぁ〜。ジブンで仕掛けておいて何だけど、葉月先輩黙っちゃったよ。

情けないと思いながらも、木の陰に隠れて様子を見ていた俺は、

黙って何も言わない葉月先輩に、困った顔をしている先輩を見て、

ちょっと後悔した。先輩を困らせるつもりじゃなかったんですよ？




「け・珪…………くん？」


「……………………………………」


「……市販の……野球ボールの形の……義理チョコ……なんだよ……？」


俯いて、小さな声で、今にも泣き出しそうな先輩の声……。













しばらくボーっとその場から動けなかった。


葉月先輩が先輩の頭をなでて、

二人また笑いながら歩き出して、

その姿が見えなくなっても……。






分かっていたっス！そんなこと。

本人にも直接言われたんですから、分かっていたんですけど……。

何度も言われなくても。



でもやっぱ、ショックだったっスよ……。


野球ボールの形のチョコ。甘いはずのチョコ。


「義理チョコなんだよ？……ッスかぁ〜」


葉月先輩に誤解されるのは、マズイってことですよね？

本命はやっぱ葉月先輩ってことですよね？






やっぱり、俺、出る幕マジないってことっスよね？








先輩、このチョコ……






苦いっスよ……？






ＥＮＤ

花野の言い訳？

バレンタインには自作ＳＳを！と意気込んだものの、何にも全く浮かばずに、このままでは何もせずに終わってしまう！
それはマズイ！と苦悩（？）している時、初めて参加させてもらっている同盟「ＧＳマダム倶楽部」のバレンタイン企画・作品募集を見ました。
これは参加しなきゃでしょう！？と思った瞬間！日比谷君視点のこんな話の断片が浮かびました！
でもやっぱり断片で、会話形式しか浮かばないので（マンガで描ければまだマシなんでしょうけど。）
まーた、尻切れトンボで形にならないじゃない！と少しは足掻いてみたのですが…。無駄な足掻きだった！ごめんなさい。
今回、このセリフの為に久々にＧＳをプレイして、友好でいいかと姫条君も日比谷君も思っていて、セリフ見たんですけど、忠実に入れるには、あっさりしすぎなんで、ときめかすことにしました。
日比谷君は好きになっているんですが、義理チョコで友好に戻ったか？ってとこでしょうか？
自作よりゲームのセリフが多くってすみません！うまく短く引用っていうことが出来ませんでした。
最後に、日比谷君と言えば、「ッス」。最初にSS書き始めた時、ひたすら語尾をそうしたのですが、ドラマCD聴いたらそうでもなかったので、今更どうしよう？なんて思いながら、少しだけ訂正しました。

ここまで読んでくれてどうもありがとうございます！
まだどう書いていいのか分からずにおたおたしていますが、頑張りますので、よろしくお願いします！

2004.2.3(節分です）　皆さんに愛を込めて（込めんでいい？）･･･花野

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