仔猫とパジャマ

ハラハラと雪が降り始めてしまって、傘も持たずに出かけていた私達は、

お家でＤＶＤでも見ようかと、足早にの家に向かっていた。




？？？

どこかからか、かすかに聞こえる。

？？？

「、どうか･･･したのか？」

ふと立ち止まっては、辺りを見渡している私に、が聞いた。

「うん･･･。」

勘違いかなって思って、はっきり言えず首を傾げる。

「･･････どうした？」

とても綺麗なグリーンの瞳が私を心配そうに見ている。

「うん。あのね、こんな時期に勘違いかな？って思うんだけど･･･。」

やっぱり、言葉に詰まる。

「？」

が何のことだ？と言いたげに私を見つめ、言葉の続きを待っている。

でももし、勘違いじゃなかったら！そう思って思い切って、言ってみることにした。

「どこかで、猫の鳴き声がしない･･･？」





雪がだんだんひどくなってきて、すごく寒かった。

は私の言葉を信じて、一緒に近くをあちこち一生懸命探してくれた。

１時間位たった頃、私の勘違いだったら、本当にどうしよう･･･そう思って、私は泣きそうになっていた。

「こんな雪の中、放っておけないだろう？」

「･･････」

「大丈夫。必ず･･････見つけてやるから。」

そう言って、私の頭に積もった雪を払いながら、優しく微笑んでくれた。

は私の勘違いかもなんて考えもせずに、私が猫の心配をしていると思ってくれている。

私は、に私の勘違いで雪の中散々探させて、嫌われたらどうしようなんて思っていたのに。

ごめんね！猫ちゃん！ごめんね！！






「おい、いたぞ！」


が、小さな公園の脇の植木の中から、毛布の入ったダンボールを見つけた。

急いで駆け寄ると、生後どの位だろう？小さい小さい子猫の赤ちゃんだった。

さすがに弱っているようで、もう鳴く元気もなさそうだった。

「おい、病院に連れて行くぞ！」

がそう言って、私の手を掴んで走り出した。




「生後１ヶ月って所でしょう。母猫がいなくても、自力でトイレが出来ているようだし。

室内で飼っていた猫の子供でしょうね。時期的に少し早いようですから。

病気も無いようだし、きっとすぐ見つけてあげたのでしょう。

暖かくなったら、ほら･･･」

「にゃー」

まだヨタヨタとあぶなっかしい足取りではあるけれど、私達に近寄ってきた。

「良かったぁ〜」

本当に良かった。見つけられて良かった。







「ねぇ、。」

「なんだ？」

「･･････良かったの？」

「いいって、言っただろ。何度も聞くな。」

「う･･･ん。･･･ごめん･･･ね？」

が立ち止まり、私の腕の中にいる子猫の頭をなでて、

「名前･･･決めてやらなきゃな。」

綺麗に微笑んでくれた。





「おい、俺達このままじゃ風邪引く。

お湯入れるから、、先に、入って来い。」

何か何でもないようにが言うんだけれど･･･。

「え？が先に入って？」

だって、だって、の家に来るのはまだ３回目で、まして、何の用意もないのに、お風呂に入るなんて！

一人パニックになっていると、くすっとが笑った。

「あ、何で笑うのぉ？」

ぐるぐる考えている事を見透かされたみたいで、恥ずかしくなって、ぷぅ〜っと膨れてみたんだけど、

「お前、何考えてるんだ？」

って意地悪な瞳で笑っている。もーひどい！

「････････。」

多分、真っ赤になって俯いている私に、

「ほら、本当に風邪引くから、とっとと入って来い。

これ、とりあえず･･･。ないよりマシだろ？」

タオルとパジャマを渡して、私をバスルームに入れて、ドアを閉めた。

「･･･何にもしないよ･･･。今日は･･･な。」

と耳元にそう言い残して･･･。







「今日はって？」

真っ赤になっている鏡に映った自分に問いかけてみる。

そ、そりゃ、恋人になったんだし？私だってなっちんから、色々聞いてはいるんだけど･･･さ。

まだ、キスもしてないよ･･･？

「わぁ〜ん。ダメだよぉ。考えちゃったら出られなくなっちゃう。」

そう自分に言い聞かせて、

「早く入って出なくちゃ、が風邪引いちゃうよ。」








「･････････････」

な、なんで？なんで？このパジャマ私にぴったりなの？

どう考えたって、女物のパジャマだよね？これ？なんで？？


「･･･出たのか？じゃ、交代してくれ。」

「あ、う･･･ん。」

ドキドキしながら、バスルームから出るとが子猫を抱いて立っていた。

「こいつにミルク、よろしくな。」

は全然何ともないようにそう言って、温めたミルクの入ったお皿と子猫を私に渡した。

「コーヒーは今、入れてる。入ったら俺の部屋で待ってて。」

「あ、うん。」

？あれ？心なしか、早口？？と思いながらも歩き出した。


「･･･やっぱり白いパジャマ、お前に似合うな。」

私が振り向くより早く、はバスルームに消えた。


へなへなへな〜。

「うん、もう！絶対からかってるよぉ〜。」

真っ赤になって廊下にしゃがみこんでしまった。




「にゃー？」

子猫の鳴き声で我に返った私は、の部屋に行った。

「あ、もう子猫のベッドが用意してある！」

手際がいいなぁ〜なんて感心しながら、子猫とミルクをそっと降ろす。

「あ、良かった。やっぱり自力で飲めるね。」

安心して、じーっと子猫がミルクを舐めるのを眺めていると、

ふとコーヒーの香りが漂ってきた。

「あ！」

すっかりコーヒーを忘れてたよって、振り向くとがコーヒー持って立っていた。


「ご、ごめんね！コーヒー忘れてた。」

「いや、べつに･･･。」

コーヒーカップを１つ私に渡し、私の隣に座る。

当たり前なんだけれど、同じシャンプーの香りにドキンとした。

の顔が見れなくて、俯いてしまう。

「･･･どした？」

心配そうな顔。

「う、ううん。なんでもないよ。」

それよりも、子猫ちゃん離乳出来てるみたいだから大丈夫だよね？と話題をそらしてみる。

ミルクを飲み終わり、満足げな顔した子猫は、の膝に登っていった。

愛しげに抱き上げ、子猫を見つめるの横顔。

「･･･名前･･･決まったか？」

「え？私が決めるの？」

あれこれ考えるんだけど、ちっともこれ！って言うのが、

思い浮かばなくて、あーもういいや！雪の日に見つけた白い子猫だから、

「小雪ちゃん！」

そう言うと、は、ふっと笑って

「単純･･･だな。」

だって。むーっと膨れてみたけど、そんなのお構いなしで

「小雪、これからよろしくな。」

って、子猫に笑いかけたの。

「･･･ずるいなぁ･･･」

思わず、ポロッと口から出てしまった。

だって、あんまりにもが子猫に優しく微笑むから、つい！

聞こえてませんように･･･そう思ってそっと顔をあげると･･･


ΣΤΧΦΕΩЬЫÅ∽♪‡∂¢％£＊※§☆



「け・け・け・？」

口元を押さえ、真っ赤だろう自分。一瞬何が起こったのか分からなかった。

えええー？今のってキ・キスだよね？？

ええー？私、目閉じれなかったよぉ･･･？またしてもパニック。

肩を震わせて、必死に笑いを抑えている。

「あ！。笑うなんてひどいぃ。」

「･･･ごめん、お前、可愛いから･･･つい。」

「つい･･･って･･･」

嬉しいんだけど、恥ずかしくって、どうしていいのか分からなくって。

「不意打ちはずるいよ･･･初めてだったのに･･･」

そう俯いてボソッと言った。

「･･･悪い。･･･俺･･･。」

急に真剣な顔して謝ってくるに、嫌だったって誤解させちゃったのかなって思って、

「ち、違うよ？嫌じゃないよ？謝っちゃ嫌だよ？･･･嬉しいんだよ？

･･･でもちょっとびっくりしちゃって･･･だから、･･･その･･･初めてだったし！･･･不意打ちだったから･･････」

わわわ、もう何言ってんの？ど、どうしよう！一人であたふたする。


「･･･お前、やっぱ変な奴だな。」

ちょっとムッとして顔をあげると、吸い込まれそうな綺麗な笑顔の。

見惚れて言葉を失った私に･･････

「じゃ･･･やり直し･･･な･･･？」

そう言って、そっと私のあごを持ち上げ、私を見つめるグリーンの瞳。

静かに近づいてくるに、そっと瞳を閉じた･･･。














「ねぇ、もしかしてこれって私の為に用意してくれたの？」

「･･････お前･･･」

に盛大にため息をつかれちゃった。

「･･･他の誰かの為でもいいのか？」

えええ？そうなの？あれれ？もしかして違うの？何だか落ち込んで俯いちゃたら、

「･･･バカ。･･･もしかしなくても･･･お前の為だよ。」

「あ、そうか、そうなんだ。えへへ。ありがとう！」

にっこり笑った私に、はまたため息。

「･･･意味･･･分かってる･･･か？」

「え？」

何の事？一瞬考えたけど、ハッと思い出した。

｛･･･何にもしないよ･･･。今日は･･･な。｝

カーッと真っ赤になっていくのが自分で分かる。


「お前も･･･少しは察するようになったんだな。」

むむ？何それ？と抗議しようとを見上げると、ほんのり赤く頬が染まってて、

うわぁ〜照れてるのぉ〜？？と見惚れてしまった。

「･･･バカ。そんな顔で見るな。」

「え？」

「･･･帰したくなくなる･･･。」

後ろから抱きしめられて、うん。帰りたくないなんて思う自分がいる。

まだ付き合って1ヶ月で、キスだって今日が初めてなのに･･･。

こんなにもが愛しくて、ずっと一緒にいたい。

帰らない･･･それが何を意味するのか･･･具体的にどうするのかは分からないけど、

でも知ってる。だったらいい。ううん、じゃなきゃ嫌。でも怖い。

まだ･･･怖い･･･。

ギュッと力強く抱きしめられた。

「･･･。ごめん･･･。困らせるつもりじゃ･･･。」

え？

そりゃ困ってるけど、でも嫌なんじゃなくて･･･何か言わなきゃ！

そう思って、私の肩に乗っているを見たら、その顔はまいったって言ってる気がした。

それがもう何か可愛いなぁと思って、意地悪したい気分になっちゃった。

だって、いっつもやられっぱなしなんだもん。

「今日は、何にもしない･･･って嘘･･･ついたよね･･･」

悲しそうに、俯いてそう言ってみた。


「･･･嫌･･･だったのか？」

ものすごく辛そうな悲しそうな声がした。

あ、やり過ぎちゃった。傷つけちゃった。どうしよう！そう思った。

「ち、違う！」

慌てて顔をあげたら･････････笑ってた！

ムーーー！騙された！！ガックリ･･･。

やっぱりには勝てないのかなぁ？ちょっとむくれる私に



「･･････」


の甘い声。注がれる甘いキス。



ふわふわ幸せな気分･･･。





今はまだ怖いけど･･･うん、そんなに遠くない未来。

帰りたくない･･･私からにそう言えたなら、

どんな顔をするんだろう？



その時、初めて、勝てるかなぁ？







ＥＮＤ
800ＨＩＴありがとう。まつるさんへ
(C)KanoNakaizumi‘Lemonade’



花野の言い訳

キャー！！すみません。

王子か姫条君か先生とラブラブ！とのリクを頂きまして、
もうどうしよう！って思ったのですが、バカップルってのを書いてみたくなりました。
そうなるとターゲットは王子しかいない？と暴走。
でも、王子！やっぱり難しいので、主人公ちゃん視点にしてみました。
うーむ。でもやっぱり難しい。しかも、子猫に嫉妬する王子！を登場させたくて、
猫ちゃん出したくせに、傘もささずに１時間。ずぶ濡れ？じゃ、お風呂じゃん！なんて、
思ったら、用意周到なパジャマ！なんての思って、
何をどうしよう？と自分で収拾つかなくなってしまいました。
しかも猫に嫉妬してるの王子じゃなくなってるし！
やり直しのキスで終わりにしようかと一度ＥＮＤにしたのですが、
あーパジャマ！と続きをまた始めたら、もうどう終わればいいのやら？
で、こんなしょうーもない勝負？で終わることに。
いやーでも、次から次へと色々してくれそうで、収拾つかないんだけど、楽しかったです。
希望通りラブラブになっているかどうかは･･･不安ですし、主人公ちゃんがにぶ過ぎると
話が進まないので、なっちんに色々入り知恵してもらっていることに。

800番リク申請してくれたまつるさんのみ、お持ち帰りＯＫということで。
押し付けますので、貰ってください！

2004.2/23　花野


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