独占欲

「……興味、ないな……。」

「え？」

「それが、どうかした……のか？」

「ううん。なんでもない！」

「……そう、か……。」

違う。こんな風に言うつもりはなかった。

どうして俺は、こんな言い方しか出来ないんだ？

の笑顔が曇る。…そんな顔するな。

「じゃ、俺、行くから……。」

「あ、うん。ばいばい。」

居たたまれなくなって、俺はその場を離れた。

無理矢理、笑顔を作って手を振るに、心を残しながら……。




カシャカシャカシャッ

「はぁ〜い。葉月ちゃん、いいねぇ〜。」

もっと、他に言いようはなかったのか？

「葉月ちゃん、今度はこっちに視線くれるか〜。」

カシャカシャカシャ

アイツの悲しそうな顔なんて見たくない。

傷つけるつもりなんて、なかったのに……。



日曜だというのに、急にショッピングモールで撮影になった。

俺は昨日のの表情が頭から離れなかった。

本当なら、今日は一緒にどこかに行こうと誘うつもりだった……。

カシャカシャカシャ

ん？

大勢のギャラリーの中に、今を見た気がした。

でも……。

「はい。葉月ちゃん、ちょっと休憩！次の衣装に着替えておいて。」

「あ、はい。分かりました。」

まさか……な。



「葉月く〜〜〜〜ん！！」

！！！

人込みの後ろの方で大きく手を振ってるがいた。

「……。」


人込みの中に飛び込もうとした俺をスタッフが止める。


「わりぃ。ちょっと通してくれよ。」

どっかで聞いたことのある声が人込みをかき分け、近寄ってくる。


「よ！葉月！」

「鈴鹿……。」

その後ろから、が顔を出す。

「今日はお仕事だったんだね！お疲れ様。」

にっこり笑う。昨日の事なんてまるで忘れたかのような笑顔。

でも、何故……鈴鹿が一緒にいるんだ？？

デート……なのか？

そう思った途端、どうしようもない怒りがこみ上げてくる。

「二人してどうかしたのか？」

自分でもびっくりする位、冷たい声だった。

は少しびっくりした表情をしたが、鈴鹿には通じない。

「おぉ。今、２人でV-1チャンプを見てきた所だぜ！」

え？

「今日のチケットをもらったの。」

がそっと俺を見て言う。

「コイツが一緒に行くヤツがいないっつーからさ。」

の背中をバン！と鈴鹿がたたく。

「おい！」

ムッとしてを俺の方に引っ張る。

「お、わりぃ、わりぃ。そんな怒るなって。」

「……。」

鈴鹿を睨むけど、コイツはちっとも気づかない。


ザワザワザワザワ……

誰？あの子？

何？アイツ！！

「葉月ちゃん、お友達なら一緒に控え室に行って。」

「え？」

「騒ぎにならないうちに。」

「あ、はい。」

「あ、ごめんなさい。」

スタッフに言われて、を連れて控え室に行こうとしたが、

「私達、帰るから！お仕事頑張ってね！」

「おぉ。そうだな！じゃあな、葉月！」

２人で一緒に帰る？？？



「ちょ、ちょっと葉月君？？」

無言での手首を掴み、控え室に連れて行く。

「お、おい！葉月？？」

鈴鹿の声など聞かない。



だけを控え室に入れ、ドアを閉める。

「は、葉月君？どうしたの？」

「……。」

「何で怒ってるの？」

泣きそうなを見て、心は痛む。

俺はどうして、こんな……。





にアイスティーを渡し、自分はアイスコーヒーを飲み、

少し気持ちを落ち着かせた。


「お前……どうして鈴鹿と？」

「え？だって……。」

その瞬間、の顔が再び曇る。

「だって？」

「だって、葉月君。興味ないなって……。」

！！！

そう、昨日確かに言った。

お前の笑顔が曇った原因だ。

「……。」

なんて言えばいい？

俺はなんて言えばいい？


「葉月君と一緒に行こうと思ったんだけど、好きじゃないみたいだし。」

そうだな。興味はないな。

「でもチケット今日の分だし、折角貰ったから無駄にしたくないなって思って」

はそう思うだろうな。

「教室でチケット見てたら、鈴鹿君が見たいって言ってくれたから。」

だから鈴鹿と行こうということになった訳だ……。

「それで、どうして葉月君が怒るの？」

は泣きそうな顔で、でも強気な瞳で俺を見つめる。

そう……だよな。俺達、付き合ってる訳じゃない。

自分が興味ないと言っておいて、他のヤツと見に行ったからって、

怒るのか？俺は……。


だけど……嫌なんだ！

俺以外のヤツとお前がデートするなんて！

何も伝えていないくせに、わがままなのは分かってる！

だけど……。

じっと見つめて俺の言葉をが待っている。


そっとの肩に手を置く。

「ごめん……。悪かった。」

「え？」

「俺が付き合うから……」

「葉月君？」

「今度から全部、俺が付き合うから、他のヤツと行くなよ。」

やっと、それだけを告げる。

「本当！！！？」

パーッと笑顔になる。すごく嬉しそうに…。

そういうお前見てると俺も嬉しい。

コイツにはかなわない。


でもコイツ、全然分かってないんだろうな……。


俺の独占欲……。






END
2828HITありがとうｖカレンさんへ
(C)KanoNakaizumi‘Lemonade’

■　花野の言い訳　■
カレンさんのリクは、「主人公ちゃんと珪くんと和馬くんが３人出てくる。
できれば休日。（夏休みとか冬休みでも）２人（珪くんとでも和馬くんとでも)が、
デートもしくはソレっぽく歩いてる所にバッタリ的な感じ」でした。
私は主張してる通り！王子一押しの主人公至上主義！王子が辛い思いをするお話書けません！
でも和馬も好きなので、和馬はぜーんぜん何も考えていない!という設定にさせてもらいました。(笑)
結局テーマは嫉妬だよねぇ？なんて、嬉々とした私ですが、王子が嫉妬なら和馬とデート！
自分が書きたいシリーズ（まだ書き始めていない）に書きたいと思ってたお話ですが、書いちゃえ〜。
でも何か上手くいかなかった……ごめん！カレンちゃん！もっと精進するから！許して！
しかも！「V-１チャンプ」夏じゃないし！（いいよね？休日だから）


2004.7.27　花野

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