２人の始まり

第三日曜日……。

今日は鈴鹿の応援に行くからと、オレは誘いを断られた。

鈴鹿の応援？？

そりゃ、鈴鹿と仲がエエし、バスケ部のマネージャーとも仲がエエ事は知っとる。

せやけど、先週もバスケ部の手伝いをするとか言われた。

夏は短いんやで？

アイツと海に行きたいやんか。

へ、変な意味ちゃうで？

去年はナンパ野郎に邪魔されてしもたからな。

純粋に夏を満喫したいなぁ〜なんて思ってるだけや！

って、誰に言い訳してるんや？オレ？

はぁ。でもアイツのいいところやし、

「オレを優先しろ！」

なんて、言える仲やないしな。。。

結局オレは、折角の夏休みにワザワザ制服着込んで、学校に出かけることにした。

アイツと一緒におりたかったから……。





「ごめんなさい。その日は友達と海に行く予定なの。」

「友達って誰？」

「姫条君だけど……。」

「姫条？アイツと付き合ってるって本当なんだ？」

「え？……付き合ってる訳じゃないけど？？」


学校に着いて、アイツを探してたら、アイツが誰かに誘われていた。

友達？付き合ってない？

即座にそう答えるにムッとしてるオレがいる。

確かにそうなんやけど……。

「え？それじゃあ……」

その後の言葉を言わせないように、ワザとらしく声をかける。

「！こんなとこにおったんかいな。探したで。」

にっこり笑いつつ、の話している相手にガンを飛ばす。

「あ、姫条君！！」

にっこり笑って、小走りでオレに近づいてくる。

「じゃあ、さん。またね。」

ヤツは分が悪いと思ったのか、退散してくれよった。

「あ、うん。さようなら。」

にこにこと手を振るに、胸がザワザワする。


「アイツ、なんやねん？」

不機嫌やと分かるような声やったかもしれん。

「え？来週遊びに行かないかって、誘われたの。」

「へぇ〜。」

「？……でも来週は姫条君と海に行く約束してるもんね！」

にこにこと屈託ない笑顔で答えてるにムカムカする。

「ほな。オレとの約束がなければ、今のヤツと出かけるんか？」

まだ何も伝えてもいないオレにそんな事言う権利はない。

分かっているのに止められない。

「え？」

がびっくりした顔をした。

「………………」

言っちゃあかん！

言ったらあかんやろ！！


「ジブン、鈍いのもたいがいにしとけよ！」

「え？」

「……ほなな。」

「き、姫条君？？」


言ったらあかん！そう思っていたのに、

止められへんかった。

アイツは悪くない。鈍いとこも大好きなんや。

せやのに……。





その後、から連絡はなかったし、オレもする勇気がなかった。

ごめん。……なんて、何にごめんや？

嫉妬や……なんて、オレに言えるんか？？

海に行く約束の日。

駅前広場で待ち合わせをしていた。

来てくれてるやろか。。。。

アイツを待たせたら、ナンパに集られると分かっているくせに、

約束の時間通りに行く勇気がなかった。

来ないかもしれないアイツを待つのが怖かったんや。





「いい加減にして下さい。人を待っているんです！」

アイツの声や。

「なぁ〜んて言って、すっぽかされちゃったの？可哀想だねぇ。俺と遊ぼうよ！！」

「離して下さい！」

ナンパ野郎が、の腕を掴みやがった！

バシッ！！

「な！何すんだよ！！」

「オレの連れに何か用か？？」

思いっきり凄んで見せる。

「あ、彼氏来たんだ。良かったね。それじゃ！」

オレの後ろでオレの服を掴んで震えていたの手が離れた。

「すまん！遅れてしもて。」

「ううん。全然。」

にっこり笑う笑顔が今日はぎこちない。

やっぱり先週のアレやな。。。

来てくれていただけで、オレは相当嬉しいんやけど、

海に行くまでの間、会話出来へんかった。

重苦しいよな。こんなんちゃうやろ？

オレはこんなん望んでへん。






海に着いて着替えをすませて、急いでの所へ向かう。

「一人じゃありません！」

の声が聞こえた。

またや……。

オレは不機嫌を隠せない。

「オレの連れに何か用か？」

退散していくナンパ野郎達に、もうウンザリで、盛大にため息をついてもうた。

「まったく、毎回毎回何やねん！」

オレはと楽しみたいんや。せやのに……。

気を取り直して、振り向いた。

「大丈夫やったか？」

「うん。だいじょう……ぶ……ッ」

ポロポロとの瞳から涙が溢れよった。

「？？」

オレがに近づこうとしたのを阻止するように手を出し、

「ごめんなさい。何でもない…。」

必死に涙をふき、俯きそう答える。

「何でもないことあらへんやろ？」

の涙にびっくりしてもうて、大きな声になってしもた。

ビクッとする。

「アイツになんかされたんか？？」

そないなこと許さへん！

さっきのヤツを追いかけようとしたオレの腕をが掴む。

「ち、違う……」




涙止まらんを岩陰まで連れて来て、泣き止むまで待とう思った。

オレのせいなんか？オレが泣かしてるんか？


「私、いつも姫条君の事、怒らせてばっかり……」

ふとが話し始める。

「私と一緒にいても、姫条君楽しくないなら、無理しないで？」

涙をためて、オレを見つめる。

違う！そうやない！


「き、姫条君？？」

思わず、ギュッとを腕に閉じ込める。

「すまん……。」

「！」

がオレの腕から逃れて立ち上がろうとする。

「離して！迷惑なら帰る……。」

違う。どうしてや……。

更に抱きしめる腕に力をこめる。

「そうやないんや……。」

オレに勇気がないだけやのに、なんで気づかへんのや！と

勝手に怒って、オレのものやないのに、独占したくて。


「好き……なんや。」

ようやっとそれだけ……。

「え？」

が腕の中で固まるのが分かる。

「すまん。……嫉妬……してただけや。他の男に……」

メッチャカッコ悪いな、オレ……。

「姫条君が、私を……？」

戸惑いの混じった声でそうつぶやく。

「……そうや。先週も付き合ってないって即座に否定されたんが、ショックやっただけなんや。」

「姫条く………。」

はするりとオレの腕から離れ、立ち上がった。

じっとオレを見つめているのが分かるんやけど、

かっこ悪くて情けなくて、オレは目を合わせることが出来んかった。

くすっ

「だって、付き合ってないよね？」

笑って言うに、愕然として、思わず顔をあげた。

「そ、そりゃそうなんやけど……。」

そこで目が合ったは、頬を真っ赤に染めながらも、満面の笑みやった……。

思わず見惚れてしもて、言葉を飲む。

「じゃあ、これからは、彼氏がいるから！って断ってもいいの…？」

首をかしげて、恥ずかしそうに聞いた。

の腕を掴み、再びオレの腕の中に閉じこめようとする。

「わ、危ないよ。」

トサッ

オレの上にが座る。

「ほな。オレの彼女に手ぇ出すなって言うてもええ？」

じっとを見つめる。

かぁ〜と益々紅く染まるが、ほんまに愛しい思う。

「……うん……。」

小さい声で答えてくれた。



「好きやで……。」



海辺の岩陰で、初めてのキスをした……。





ＥＮＤ
5963HITありがとう。碧さんへ
(C)KanoNakaizumi‘Lemonade’



花野の言い訳
ラブラブ……？うわぁ〜ん。ごめんなさい！
花火大会でまだ鈍感な？主人公ちゃんと海でくっつけよう！！と思ったんですよ！これでも！
す、すみません。もう無理矢理って感じですよね？？うわぁ〜ん。
もっとカッコイイまどかが書きたいのに、どうしてこうなっちゃうんでしょう？
全然関係ないけれど、第４日曜日に海なんて！クラゲで泳げないと思うんですね。
泳げる地域なのか？はばたき市！！

2004.9.9　花野

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CG背景は「ｍａｏｓｐａｃｅ別館 背景素材工房」様からお借りしています。