「あ、雨やん……」

朝起きて、天気予報はやっぱり当てにならんと、ブルーな気持ちになった。

「折角の日曜日やのになぁ〜。」

盛大にため息が出てまう。

「また、ため息！幸せが逃げちゃうぞ！」

この前、に笑われたんやったな…。

でも…


「今日、どないしよう？」

雨なんてめんどくさい。

傘さして出歩くなんて、かったるい。

今まで遊んだ奴らは、髪がまとまらんから嫌だとか、

泥が跳ねたら嫌だとか…雨が降ったら、デートは中止やった。

オレもめんどくさいから、ちょうど良かったんや。

そやのに………。

最近の自分は本当に変かもしれん。

どっかぶっ壊れてるのかもしれん。

何処でもええんや。ちょっとでもええ。



……会いたい……





ＲＲＲＲＲＲＲＲ……


携帯が鳴った。



ピッ。



オレは電源を切った…。















「あ、姫条く〜〜〜〜ん！」


驚いた。イヤ、期待はしとった。

でもホンマにいてるなんて思ってなかったのかもしれん。

泣きそうな気分になってるオレがおるんやから…。

可愛い傘を自分の頭上で手を振るように、振っている。

それじゃ、濡れるやろ！なんて心で突っ込みながら、足早にに近寄る。


「すまん。遅れてしもて。待ったか？」

「ううん。今来たところ。」

にっこり微笑む。


「姫条君携帯持ってなかった？」

ドキンとする。

「なんでや？」

「朝、電話したけど、電波の届かない所にいるか、電源が入っていないって。

だから、どうかしたのかな？と思って。」

「そうか？すまんかったな。」

わざとらしくないか？と心配しつつ携帯を出し、

「あ、電源が入っとらんかった。いつ切ったんや？すまん。何か急用やったんか？」

本当は出たくなくて切ったくせに、下手な言い訳やと自分で思う。

の電話の用件を聞くのが、嫌やったんや。

雨だからデートは中止しようって言われるのが怖かったんや。

まして今日のデートは森林公園で！や。

雨の森林公園で何するちゅーねん！




「あのね。朝起きたら雨だったから……」

ドキン。。雨やったから……？

「いくらなんでも公園をお散歩でお弁当！って訳には行かないよね？って思って。」

ドキン。。だから中止にしよ……思った？

「…………」

「？」

なんでそこで赤くなってるんや？

「で？どないしたんや？」

怖い思っても……聞きたい。

「あ、あのね！」

じっと、更になんや？赤くなってオレの傘に近寄ってくる。

「雨には降られちゃったけど、森林公園に行くなら、プールがあるって思って」

プ･プール？？？

はすっとオレから離れ、視線を落とした。

「先週ね、新しい水着を買ったから……。」

その後がよう聞き取れんかった。真っ赤になって小さな声になっとる。

なんて言ったかなんて、今はどうでもええ。

それよりオレは感動してんねん。

は、雨なら雨で！オレと会うこと考えてくれてたんやないか！

他の子とちゃうって、ちゃんと分かっとったはずやん。

何をオレはビクついとんねん。アホちゃうか？

「……姫条君？」

黙ってるオレを心配したのか、赤い顔のまま、が振り向いた。

可愛い！ごっつー可愛い！あぁ、このまま抱きしめたい！

「なんや？なんや？新作水着、オレに見せよう思うたんか？」

メッチャ気分がよくなって、でもおどけて言う。

「！」

かぁ〜〜〜〜〜。

うわぁ。がまた真っ赤になりよった。

え？ホンマにオレに見せようって？こっちまで釣られて赤くなるやろ？

「姫条君の意地悪！」

「へ？オレなんか意地悪言うた？」

「…………」

「？」

「この前、あの水着可愛ええなぁって……」

「この前？」

オレは記憶を辿る。








「もう、水着売っとるんやな〜。」

ウィンドウにディスプレイされた新作水着に気づいて言うた。

「そうだね。もうすぐ夏だね！」

「そうやなぁ〜。……あ！」

「え？どうしたの？」

何気なく見とった水着に、目を奪われたんや。

にものすごく似合いそうな、超いい感じの水着。

「ほれ、あれ、可愛くないか？に似合う思うで？」

「え？」

ほれあれや！そっとの肩を抱き、水着を指差す。

ちょっとセクシーかもしれんけど可愛いビキニやった。

「わ、私には大人っぽすぎない？」

姫条君はあーゆーのが好みなの？赤くなりながら聞かれる。

「オレはエコロジストやねん。」

そんな会話をしたんや。。。





「え？…………。」

「？どうしたの？姫条君？」

ほな、何か？？は、あの後オレが言うたから、あの水着買うてくれたんか？

そういうことなんか？？？？


「つかぬ事を聞くんやけどな……？」

「う、うん？」

何？とが首をかしげる。ああ。可愛いなぁ。もう。

「もしかして、。あの水着、買うてくれたんか？」

「/////////」

「それを今日、見せてくれようと……そう思ったんか？」

「////////////////」

言葉より、の真っ赤になる顔が答えを教えてくれる。

あぁ、オレは何をやってんねん。ホンマに！

ガクっとうなだれる。

「き、姫条君？どうしたの？」

「いや……。メッチャ、損したな思って。」

「……朝、電話したんだけど……。」

繋がらなかったから仕方ないよ？そうが言った。

「！」

パッと顔をあげて、を見つめる。


「じゃ〜、今日何処行こうか？？」

もう楽しそうにこれからの日程を考えてるようや。

「ホンマにオレ、バカやな……。」

「え？何？」

ぼそっとつぶやいた声はには届かなかったようや。



「ほな、映画とか行くか？場所変えて！」

気を取り直して、提案してみる。

「映画は嫌だ！」

「へ？」

即座に強く否定され、びびった。

「あ、ごめんなさい。」

自分でもびっくりしたのか、慌てて謝っとる。

「あ、いや。映画嫌いやったっけ？ほな、カラオケとか？」

室内で遊べる所を考えて聞いてみる。

でもは首を振る。なんや？やっぱり雨のデートは嫌なんか？

帰りたいとでも言われるんやないかと心配になりつつもイライラする。

「ほな、何がいいねん！」

ちょっときつい言い方をしてしもた。

マズイ。。。。びびらせてしもたか？



「あのね、私……姫条君といっぱい話がしたいから……

映画やカラオケは今日は嫌。……ダメ？？」

！！！

上目使いに、そんなおねだりせんでくれ！

ホンマにまいるわ。この姫には。

オレが想像出来へんようなこと、喜んでまうこと、

泣きそうになる位嬉しい思うこと、オレのツボ。

押さえまくりや！



「ジブン、結構我がままやなぁ〜。」

そんな憎まれ口をたたいてみる。

「イヤ？」

心配そうにオレを見る。

「嫌やないよ？ジブンの気持ち、ちゃんと言うてくれるの嬉しいやん。」

「良かった！」

ホンマに嬉しそうに極上の笑顔で言うた。

嬉し過ぎるし！！オレの顔、赤くなってないやろか？



「ほな、姫！ジブン、何処に行きたいんや？」



「あ、ちょっと待ってよ、姫条君！」


照れくさくて、足早になったオレを追いかけてきてくれる。


ジブンとなら、こんな雨でも、何処でも、


絶対楽しく過ごせる思うわ。



そやから……側におってな……。



ずっと……。











夏には一緒に海へ行こうな。




あの水着を来たお前を……抱きしめたい……。






END
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(C)Kano Nakaizumi‘Lemonade’